大学病院勤務医の忙しい日々

医者は忙しいということはよく言われることです。でも、実際に何をやっているのかを分かっている人は、医療者以外ではあまりいないのではないでしょうか。さらに言うと、一緒に働いている看護師さんでも医者の働き方についてよくわかっていないことも多いと思います。

私は10年以上、地方の大学病院で働いていました。今では少しずつ「働き方改革」も進んできて、最後の方は私自身も働き方を調整して自分の時間を作るようにしていましたが、今回は私が一番忙しかった若かりし時期の代表的な一週間を紹介します。

なんとなく忙しいということはおわかりでしょうか。今となってはよくやっていたと思います。もちろん、いつもこの通りというわけではなく、もう少しゆったりしているときと、もっと忙しいとき(入院患者さんの急な様態変化だったり、救急患者の対応だったり、処置(筋生検)が入ったり、患者さん・ご家族への説明が多かったり)もあり、日付を超えて帰ることもしばしばありました。

事務作業という項目があると思いますが、これがなかなかのくせ者で、時間がかなりとられることがあります。上の表では1週間に1時間分しか書いていませんが、場合によっては、空き時間の大半がこれにとられることもしばしばでした。

例えば、こんな仕事をしているのかと驚くかもしれませんが、医者は自分が行った検査や処方に対して、一つずつ電子カルテに病名をつけていかなくてはならないのです(例えば血糖値を測れば、糖尿病の疑いという病名を登録します)。大学病院などの大きな病院ほど、この作業が医師に任され、小さい病院やクリニックでは事務員がかなり代行してやってくれる傾向にあり、これも大学病院で働く医師の大きな負担となっています。

その他、大学病院の特徴として、様々な会議がこの合間に入ってきます。研修プログラムの会議、倫理委員会、感染対策委員会などなど、たくさんの会議があります。また教育機関でもあるため、教育にかかる時間もあります。医学部は6年制ですが、だいたい4年生ぐらいに脳神経内科の講義が年に数回割り当てられ、その準備もあります。上の表に書いているのは、5-6年生の臨床実習生の対応です。これは2週に1回対応していました。4年生の進級試験、6年生の卒業試験の作成も分担して行います。

その他の事務作業としては、研究に関するものが多いです。研究計画書や倫理委員会への申請書、科研費の申請書など、様々な書類作成業務があります。さらに最近では臨床研究における規制が法的に厳しくなり、手続きが非常に煩雑となり、臨床研究をしたくてもできないという、本末転倒な状況になりつつあります。またそのような事務作業が多いため、実際に研究に当てる時間もかなり少なくなってしまいます(上の表では1週間に6時間程度です)。平日になかなか時間がとれないので、当直の日にいろいろと仕事を進めたりすることもしばしばでした。

さて、皆さんお気づきでしょうか。私はこの中でいったいいつ、自分の日常業務とは関連の少ない、一般的な医学の勉強(例えば糖尿病や消化器の勉強など)に当てる時間を確保しているのでしょうか。答えはほとんど全くない、です。私に限らず、日本で働くほとんどの専門医は、他の専門科の勉強を積極的にできない状況にあります。

このような状況もあり、この医療とLifeでは、医師やその他医療者の皆様にも簡単に情報を入手できるサイトとしてご利用いただけるように、整備を進めようと思う次第です。

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