目次
病気の概要
虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)は、心臓の筋肉に酸素と栄養を供給する冠動脈が狭くなったり、詰まったりすることによって発生する病気です。これにより、心臓に十分な血液が供給されず、胸痛(狭心症)や心筋梗塞を引き起こします。

分類
- 安定狭心症:身体活動やストレスにより予測可能なパターンで胸痛が発生する。
- 不安定狭心症:安静時にも胸痛が発生し、症状が急激に悪化する可能性がある。
- 心筋梗塞:冠動脈が完全に閉塞し、心筋(心臓の筋肉)が壊死する状態。
症状
通常は50歳以上の壮年期以降に起こり、胸がしめつけられるような不快感としてあらわれます。典型的には2-5分間続き、左肩や両腕に放散することがあります。労作時やドキドキしたときに症状がでることが多いです。30分以上続く場合は心筋梗塞になってしまっている可能性があるので、すぐに病院へ受診する必要があります。
虚血性心疾患の症状は以下のとおりです。
- 胸痛や胸部の不快感(圧迫感、絞めつけられるような感覚)
- 息切れ
- 発汗
- 吐き気や嘔吐
- 腕、肩、首、顎、または背中への放散痛
間違えやすい病気
典型的な症状の場合は、診断は難しくありません。しかし、症状が典型的でない場合もあり注意が必要です。
胸の痛みと理解していると、間違えやすいのは、肋間神経痛や帯状疱疹などが挙げられます。知らず知らずに胸のあたりのケガをしていたりすることもあります。これらは触れると痛むという特徴がありますが、虚血性心疾患では触れても痛みはでないので、すぐに見分けがつきます。
それ以外で似た症状を起こす病気としては心膜炎、肺血栓塞栓症、大動脈解離などが挙げられますが、どれも虚血性心疾患より頻度は少ないです。またいずれも重病ですのですぐに病院を受診する必要があります。
頻度の多い病気として肺炎はありますが、熱がでたり痰がでたりと症状は少し異なります。逆流性食道炎も似た症状となることがありますが、主には胸焼けの様な症状になります。
どのような症状にもなりえる病気として、身体症状症があります。これは体の機能は問題ないにもかかわらず、精神的ストレスによって体の不調を訴える病気です。検査をして何も異常がない、精神的ストレスによる他の症状もあるなどの場合は、身体症状症の可能性があり、心療内科や精神科への受診が必要です。
原因
- 動脈硬化:冠動脈の内壁に脂肪性プラークが蓄積し、血流が妨げられる。
- 高血圧:長期間の高血圧は動脈を損傷し、動脈硬化を促進する。
- 高コレステロール:悪玉コレステロール(LDL)が高いと、動脈硬化のリスクが高まる。
- 喫煙:タバコは血管を損傷し、血液の凝固を促進する。
- 糖尿病:血糖値が高い状態が続くと、動脈の損傷が進む。
- 肥満:体重が多いことは心臓に負担をかけ、動脈硬化のリスクを高める。
- 家族歴:家族に虚血性心疾患の人がいるとリスクが高まる。
診断方法
- 問診と身体診察:症状やリスク要因についての詳細な問診と身体診察。
- 心電図(ECG):心臓の電気活動を記録し、異常を検出する。
- ストレステスト:運動中の心臓の反応を調べる。
- 心臓カテーテル検査(冠動脈造影):冠動脈の詳細な画像を撮影し、血流障害を確認する。
- 血液検査:心筋梗塞のマーカー(トロポニンなど)を確認する。
治療法
- 薬物療法:アスピリン、スタチン、ベータブロッカー、ACE阻害薬、ニトログリセリンなどの薬を使用。
- 冠動脈形成術:バルーンカテーテルを用いて狭窄部を広げる手術。
- 冠動脈バイパス手術:詰まった冠動脈を迂回するために新しい血管を作る手術。
- 生活習慣の改善:食事、運動、禁煙などのライフスタイルの変更。
予防方法
- 健康的な食事:野菜、果物、全粒穀物、低脂肪乳製品を多く摂る。
- 定期的な運動:週に150分以上の中程度の有酸素運動を推奨。
- 禁煙:タバコを完全にやめる。
- 体重管理:適正体重を維持する。
- 定期検診:血圧、コレステロール、血糖値を定期的にチェック。
よくある質問
- 虚血性心疾患は治りますか?
- 完全に治すことは難しいですが、適切な治療と生活習慣の改善により症状を管理し、生活の質を向上させることができます。
- 虚血性心疾患と診断されたら、すぐに手術が必要ですか?
- 症状や冠動脈の状態により異なります。軽度の場合は薬物療法と生活習慣の改善が主な治療法となることが多いです。
- 狭心症と心筋梗塞の違いは何ですか?
- 狭心症は一時的な血流不足による胸痛を指し、心筋梗塞は冠動脈が完全に閉塞し心筋が壊死する状態です。30分以内で胸痛などの症状が治まる場合は狭心症で、それ以上続く場合は心筋梗塞が疑われます。
- どのような食事が良いですか?
- 果物、野菜、全粒穀物、低脂肪乳製品、魚、ナッツ、オリーブオイルなどが推奨されます。ただし食べるほどよいというわけではなく適度な摂取が必要です。
- 塩分、飽和脂肪、トランス脂肪酸が多く含まれる洋菓子、揚げ物、マーガリンなどの摂取は控えるべきです。
まとめ
以上、虚血性心疾患について解説しました。急な胸部不快感や肩への放散痛などを認めた場合にはすぐに病院を受診しましょう。食生活や運動習慣などに気をつけて、自分の血管をいつまでも若く保ちましょう。
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