この人体解剖学超入門では、病気を理解する最低限の知識としての、ヒトの臓器の解説をします。
目次
中枢神経(脳・脊髄)および末梢神経
脳は、思考、判断、記憶などに加え、運動の指示、感覚の感知・理解、自律神経の制御など、人が生きる上で必要なほぼ全ての機能を司ります。脊髄はその脳の機能と全身のやり取りをする通路のようなものです。末梢神経も通路ですが、脊髄がまとまって走行する高速道路とすれば、末梢神経は隅々まで広がった一般道になります。
脳や神経は複雑な機能をもっているため、ここで話すと長くなるため詳細は別項でまた説明します。
心臓
心臓は、全身の血液を循環させるポンプです。人の体は血液が常に巡っていないと機能しなくなり、すぐに死んでしまいます。そのため心臓は常に動いて血液を全身に届け続ける必要があります。
一方で心臓自体にも栄養は必要であるため、心臓に届く血管があり、「冠動脈」と言います。冠動脈がつまってしまうと、心臓を構成している筋肉が死んでしまい、ポンプ機能が果たせなくなります。これが心筋梗塞です。
心臓は上下左右の4つの部屋に分かれています。上側は待機室のようなもので、「心房」といいます。下側は血液を実際に送り出す「心室」といいます。左右に関しては、左側が全身に血液を送り出す重要な役割を果たし、右側はすぐ隣にある肺に血液を送るもので左側ほど仕事量は多くありません。この四つがそれぞれ、左心室、左心房、右心室、右心房と名付けられます。全身に血液を送る左側、とくに左心室が最も重要な役割を果たします。先ほど説明した冠動脈も左心室には2本、右心室には1本が割り当てられています。
次に、ポンプというものはどれもそうですが、一方通行させるための逆流防止弁が必要です。心臓は4つの部屋に分かれているため、それぞれの仕切りに4つの弁があり、それぞれ大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁といいます。これらの締まりが悪かったり、開きが悪かったりするような病気があり、総じて弁膜症といいます。
肺
肺は、酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出すという機能をもつ臓器です。胸の左右にあり、その間に心臓や心臓から出たり入ったりする太い血管、食道などがあります。肺は小さい空洞を持つ袋のようなものが密集してできており、その袋に血管が通っています。それによって袋の中を出入りする酸素や二酸化炭素などを、血管を通して交換します。交換する方法は、肺の下にある横隔膜や取り囲む肋骨を動かす筋肉たちが開いたり縮んだりすることで、肺を膨らませたり縮めたりして、肺の中の空気が入れ替わります。
喫煙すると、この肺胞が壊れてしまうことによって、この空気の交換がうまくいかなくなり、体の中の酸素が減って二酸化炭素が増えてしまいます。
消化管
消化管は文字通り、食べたものを消化するための器官で、管状に口から肛門まで繋がっています。口側から食道、胃、十二指腸、小腸(空腸、回腸)、大腸と続きます。大腸は、小腸側から、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸に分類され、直腸が肛門につながります。小腸と繋がっている大腸の始めの部分を盲腸といい、盲腸の下から出る細い管状の突起した部分を虫垂と言います。よく「盲腸になって、手術をした」といいますが、正確には炎症を起こすのは虫垂であり、医学的には「虫垂炎」といって、手術で摘出するのも盲腸ではなく虫垂になります。
食べたものは食道を通って胃に入り、胃酸によって殺菌と溶解によって吸収しやすい状態にされ、次の十二指腸では胆嚢と膵臓から出る消化液で脂分などが分解されます。その後、小腸で栄養分、水分が吸収され、大腸でさらに余剰な水分が吸収され、残ったものと腸内細菌により便が作られます。
肝臓・胆嚢
肝臓は先ほど小腸や大腸で吸収されたものを全身に運ぶ前の解毒装置です。そのため腸から吸収され血管(門脈)内に入った食べ物の栄養素などは血液と共にまず肝臓に運ばれます。そこで解毒され、心臓に運ばれます。胆嚢は肝臓のすぐ下についている袋状のもので、肝臓で作られた消化液を貯めておき、必要に応じて十二指腸内に出すという役割があります。
膵臓
膵臓も十二指腸についており、消化液を出す機能があります。それとは別に、膵臓は血糖値を下げるインスリンというホルモンを全身の血流に向けて出す機能もあります。
腎臓・膀胱
腎臓は体の中でできた余分なものを出すための尿を作る臓器です。この機能が落ちてしまうと体の中の不純物がたまってしまい、それが血液と一緒に脳に運ばれ、脳の機能が悪くなり、重症になると意識がなくなります。また余分な水分を出す機能もあるので、腎臓の機能が落ちると体に水が溜まってしまい、むくんだり、体の臓器の周りに水が溜まってしまったりします。肺の周りに水がたまる(胸水)と、肺が十分に広がらなくなり、呼吸困難が起こります。このように腎臓の機能が悪くなると生きてはいけないのですが、それを人工的に肩代わりするのが血液透析です。
腎臓では絶えず尿が作られているので、垂れ流されると大変です。そのため、作られた尿は尿管を通って膀胱に溜められます。そして必要に応じて排尿されます。
脾臓
脾臓は血液の溜まり場で、古くなった赤血球が取り壊されたりします。他の臓器に比べるとあまり重要な役割を果たしていないため、脾臓をとっても大きな問題はなく生きてはいけます。
子宮・卵巣・精巣
これらは生殖に関わる器官です。女性では、卵子が卵巣で生成され、その後卵管を通して子宮に留まります。男性では精巣で精子が生成されます。精子と卵子が結合することで新たな命が生まれます。
眼、耳、鼻
ご存知の通り、見て聞いて嗅ぐ器官です。耳は聞く以外に平衡感覚を司る機能もついています。これが障害されるとめまいが起こります。
皮膚
皮膚は体を守るバリア機構です。また触れたものを感じたり、汗をかいて体温を調節したりする機能もあります。
骨、関節、筋肉
骨はみなさんご存知の通り、体を支える重要な器官です。関節は骨と骨をつなぎ、それらを動かす役割があります。関節をまたがって筋肉が付着していて、筋肉が収縮することによって関節が動きます。ここで骨と骨が直接ふれると痛みがでますが、そのクッション・潤滑剤の役割も果たしています。「変形性関節症」というのはこのクッションがすり減って骨と骨がぶつかり、痛みや動かしにくさが出る病気です。
骨の中には血液を作る骨髄があります。そのため、骨折すると痛くてその部分を動かせなくなるというだけでなく、出血もかなり問題となります。骨盤などの大きな骨が折れてしまうと、その出血だけで命を落とすこともあります。
血液
血液は血球と血漿からできています。血球は赤血球、白血球、血小板という固形のもので、それらが血漿という液体に浮いている状態となります。血球で最も多いのが赤血球で、酸素を運ぶ役割があります。白血球は免疫反応を司るもので、体に入ってきた細菌やウイルスなどの異物を除去します。血小板は出血したときにそれを止血する機能があります。血漿の中には栄養素の他にも免疫反応を補助する蛋白などが含まれています。
漫画「はたらく細胞」はこれらを楽しく学ぶことができておすすめです。
その他の内分泌臓器
その他の小さい臓器として内分泌臓器があります。内分泌とは、状況に応じて体調を整えるためのホルモンを体の中に出す臓器です。甲状腺、副甲状腺、副腎、下垂体などがあります。甲状腺と副甲状腺は喉仏の下、副腎は腎臓の上、下垂体は脳の下にあります。それぞれの機能については別項でご説明します。
コメントを残す