よく誤解される「てんかん」

目次

てんかんとは

「てんかん」は、いろいろな面で誤解されることが多い病気だと思います。「てんかん」をきちんと説明できる人はあまりいないのではないでしょうか。

「てんかん」≒「けいれんを繰り返す病気」

「てんかん」とは「てんかん発作」が時間をあけて繰り返し起こる状態のことです。では、「てんかん発作」とは何なのでしょうか。典型的には、全身のけいれん発作のことです。

以下の動画で起こっているのが全身けいれんの例です(英語ですが雰囲気だけ)。

てんかんはこのようなけいれん発作が繰り返し起こる病気です。けいれん発作以外の特殊なてんかん発作もあるので、正確にはてんかんとけいれんは同じではありませんが、とりあえずの理解としては「てんかん」≒「けいれんを繰り返す病気」と思うのでよいのではないかと思います(厳密に定義するとわかりにくく、むしろ誤解を招くので)。まずはけいれんを起こすものと理解して、その後で、てんかん発作でもけいれん以外のこんな症状もあるんだ、というよう少しずつ理解していけばいいかなと思います。

「てんかん」をめぐる誤解

ときどき、高齢者世代の方が多い印象ですが、「てんかん」という病名に差別意識をもつ方がいるようです。私としてはその感情を主体的に理解することは難しいのですが、これまでの歴史でいろんな誤解があったからなのかもしれません。

例えば、いらいらして癇癪(かんしゃく)を起こすという意味で「てんかん(癲癇)」という言葉が使われたこともあるようです(言葉の定義・解釈にはその時期によって固定されたものはないのですが、現在ではこの使い方は間違いといってもよいかもしれません)。

また、てんかん発作が心の病気や、「心が弱い人」に起こるものと誤解したりすることもあるようです。さっきまで普通に過ごしていた人が突然異常な状態になるので、昔の人は原因もわからず恐れて遠ざけられたというのは想像に難くありません。

てんかん患者さんが利用できる自立支援医療制度(精神通院医療)も、誤解を招くもので、精神通院医療とは区別する方がいいんじゃないかなと個人的には思います(もちろん精神科の先生でてんかんを熱心に診ていらっしゃる先生はいます)。

てんかんの原因

てんかんは脳の病気ですが、てんかん患者の脳で何が起こっているかというと、脳の電気活動の異常が起こっています。脳は神経細胞の塊です。神経細胞が情報のやりとりを、電気活動を通じて行っています。てんかん発作は、その電気活動が暴走して正常に働かなくなった状態(電気が漏電しているような状態)です。そのため、意識がなくなったり、手足を動かす神経が過剰に刺激されてけいれんを起こしたりするのです。

症候性てんかんと急性症候性発作

てんかんは多くは原因不明で、突然神経活動の異常が起こる病気なのですが、原因がはっきりとしている場合もあります。たとえば脳梗塞や脳の外傷、脳腫瘍など、脳に異常があるときにそこが異常な電気活動を起こして、てんかん発作を起こすことがあります。これを「症候性てんかん」といいます。

てんかんは繰り返すことが重要であるため、一度のみの発作はてんかんとはいいません。何か脳に異常があったとき、例えば脳炎になったときなどに一度だけけいれんを起こしたことは「てんかん」とはいいません。難しい言葉で「急性症候性発作」といいます。

一番有名な急性症候性発作は、こどもが熱を出したときに起こす「熱性けいれん」です。熱をだしたときだけのけいれんなので、てんかんとはいいません。もし熱がおさまったのに、またけいれんを起こしたりすると、てんかんとなります。

脳の障害によって、発達障害とてんかんが同時に起こることはよくあります。逆にてんかんがあると必ず発達障害があるということではありません。ここもよく混同されるところです。

てんかんの治療

てんかんの治療は基本的には飲み薬(抗てんかん薬)で、てんかん発作が起こらないようにすることです。難治性の場合は手術が行われることもあります。これらはまた別の項で説明します。

まとめ

以上、てんかんについてまとめました。てんかんは誤解されることが多い病気ですが、きちんと抗てんかん薬を飲むと、てんかん発作が起こらなくなることも多いのです。てんかんと診断されたらきちんと通院してきちんと薬を飲むことが大事です。まわりにてんかんの方がいることも実は多く、自分もこれからてんかんになる可能性もある病気です。

てんかんに対する偏見がなくなり、みんなが尊重しあえる世の中になるといいですね。

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