脳梗塞は、脳の血管が詰まり、血流が途絶えることで脳細胞がダメージを受ける深刻な病気です。一方で、症状が出た後、すぐにその血管のつまりをとる治療をすることで、劇的によくなる可能性があります。そのためすぐに救急車を呼んで治療をうける必要があります。
ここでは、脳梗塞の原因、症状、そして治療法についてわかりやすく説明します。
目次
脳梗塞の原因
脳梗塞の原因は古典的には以下の3つに分けられます:
- 心原性脳塞栓症
- アテローム性脳血栓症
- ラクナ梗塞
心原性脳塞栓症とは、心臓にできてしまった血の塊(かさぶたの様なもの)がとんでしまって、脳の血管につまることで起こります。一方で、下の二つ、アテローム性脳血栓症とラクナ梗塞は、脳を栄養する血管自体が細くなってつまるものです。大きな血管がつまればアテローム性脳血栓症、小さな先の血管がつまればラクナ梗塞となります。(ちなみに同じ原因で心臓の血管がつまれば心筋梗塞でしたね)
少し例えてみましょう。心臓を「ダム」、血管が「川」、血液を「川の水」、脳を「下流の町」とします。
- 心原性脳塞栓症:ダムで木の枝やゴミ(血栓)が発生し、川を流れて下流で詰まり、町に水が届かなくなる状態です。
- アテローム性脳血栓症:川の底に泥や砂(アテローム)が堆積し、そこに木の枝やゴミ(血栓)が引っかかり、川を塞いで水が流れなくなります。
- ラクナ梗塞:流から分かれる細い支流が木の枝やゴミ(血栓)で詰まり、小さな町に水が届かなくなる状態です。
一過性脳虚血発作(Transient Ischemic Attack, TIA)
虚血性心疾患において、つまりかけが狭心症、完全につまってしまったのが心筋梗塞であったのと同じように、脳梗塞にもつまりかけという状態があります。それを一過性脳虚血発作(TIA)といいます。TIAから脳梗塞に移行することがあるため、慎重な管理が必要です。詳細は他項で。
脳梗塞の症状
脳梗塞の症状は突然現れます。心筋梗塞のときには胸部の不快感でしたが、脳の不快感や頭痛という症状にはなりません。脳にはいろんな機能があるので、どの血管がつまって、どの部分が障害されるかで、症状は様々です(脳の基本的な構造参照)。一貫しているのは突然症状が起こるということです。代表的な症状を以下に示します。
- 片麻痺:手足の片方(右手足や左手足)が動かなくなります。
- 失語:言葉がうまく話せなくなったり、話せるけど理解できなかったりします。
- 半盲:視界の半分が見えなくなります。
これらの症状が突然現れた場合、すぐに119番に電話して救急車を呼び、できるだけ早く病院に行くことが重要です。
脳梗塞の治療法
脳梗塞の治療は、急性期の治療と再発予防に分けられます。
急性期治療
急性期の治療は時間との戦い(Time is Brain)です。以下の治療法が主に用いられます:
- 血栓溶解療法
- 発症から4.5時間以内であれば、血栓を溶かす薬(tPA)が点滴で投与されることがあります。これは血管内の血栓を溶かし、血流を回復させるための治療法です。
- 血栓回収療法
- 発症から6時間以内に行われることが多い治療法で、カテーテルを使って血栓を物理的に取り除きます。最近の研究では、一部の患者に対しては24時間以内でも効果があることが示されています。
- これらの治療が間に合わなかったり、他の理由でできなかったりした場合は、再発予防とリハビリテーションが主となってきます。
再発予防
再発予防は先ほどの分類によって治療法が異なります。
- 心原性脳塞栓症
- 心臓の中で血液が固まらないように抗凝固薬を飲むことが多いです。心臓自体の問題(不整脈や奇形)があることが多いので、その根本的な治療を行うこともあります。
- アテローム性脳血栓症
- これは虚血性心疾患のときと同じように、血管に負担がかかり、固く・細くなってきていることが問題なので、同様の血管がつまらないような治療を行います。
- 抗血小板薬
- 降圧薬
- スタチン(高コレステロール血症がある場合)
- 糖尿病合併の場合は糖尿病の治療
- その他、禁煙、体重管理など
- これは虚血性心疾患のときと同じように、血管に負担がかかり、固く・細くなってきていることが問題なので、同様の血管がつまらないような治療を行います。
まとめ
以上、脳梗塞についてまとめました。脳梗塞は比較的わかりやすい症状がでてきますが、いまだにすぐに受診できている例が少ないとされています。先進的な治療を受けられる可能性がありますので、麻痺などの症状がでた場合には、夜中でも救急車を呼んで、直ちに受診するようにしましょう。
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