目次
はじめに
日本で使えるA2A受容体拮抗薬はイストラデフィリン(商品名:ノウリアスト)です。このイストラデフィリンはパーキンソン病治療の補助薬として使われます。主にウェアリング・オフがでてきた進行期に使われ、オフを軽減する効果があります。他の薬剤と少し特徴が異なり、この点について今回は解説します。
作用機序
A2A受容体拮抗薬の作用機序はよくわかっている反面、理解するのはとくに難しい薬です。そのため、苦手な方は読み飛ばしてください。脳や体の中にはエネルギー産生に関連したアデノシンという物質があり、それがくっつく受容体として、A1受容体とA2A受容体があります。その中でパーキンソン病治療に用いられるのはA2A受容体拮抗薬です。
細かい話をすると脳の機能の説明となってしまい非常に難しいので、かなりざっくりと説明します。以前にお話した運動の調節機能の説明(脳はどうやって体を動かしている?(大脳基底核と小脳のお話))の中で、ブレーキの役割を果たしている大脳基底核にこのA2A受容体があります。ここで、ドパミンとアデノシンの刺激がお互いにバランスを保っているのですが、パーキンソン病ではドパミンが減ってしまうので、アデノシンの作用が相対的に強くなり、結果としてブレーキが効きすぎてしまって動作が鈍くなります。
A2A受容体拮抗薬は、この過剰になったアデノシンの作用を抑えることで、ブレーキの効きを弱める作用があります。
オフの軽減効果
イストラデフィリンにはオフの軽減作用があり、主にはこの効果を期待して使用されます。1日1回投与で良いことも開始しやすい点です。いずれの補助薬もそうですが、ウェアリングオフが出てきた比較的初期〜中期に使用すると効果が実感しやすいとされています。パーキンソン病治療薬の一般的な副作用であるジスキネジアや幻覚なども、ある程度出現するリスクがあるので、病状に応じて使用されます。神経保護効果を示唆する報告もありますが、まだ証明はされていません。
眠気との関連
他のパーキンソン病治療薬は眠気やぼーっとするという副作用が多い中、イストラデフィリンは比較的眠気が出にくいとされています。なぜかというと、カフェインに似た作用があるためです。
カフェインに眠気覚ましの効果があることは有名ですが、これもA2A受容体(および、もう一つのA1受容体)の抑制作用によるものだと言われています。そのため、イストラデフィリンにもカフェインと同様の覚醒作用があるとされています。
実際にはイストラデフィリンでも眠気が出るという方はいますので、全ての人に覚醒作用があるわけではないのですが、比較的眠気が出にくいという印象はあります。
腰曲がり
腰曲がりは、軽度のものも含めると、ほとんどのパーキンソン病患者さんが経験する症状です。適切な内服治療とリハビリテーションで予防できることはありますが、難治性のことも多くなります。ドパミンアゴニストによる薬剤性の腰曲がりなどもあり、その機序は複雑です。
その中で、イストラデフィリンが腰曲がりを改善させる可能性が示唆されており、我々のグループもその報告をしました。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022510X21027805

腰曲がりの理由は様々であり、もちろん全ての患者さんに効果があるわけではないのですが、試してみる価値がある治療となります。
まとめ
- A2A受容体拮抗薬であるイストラデフィリンはパーキンソン病のオフ改善効果がある
- 幻覚やジスキネジアには注意が必要
- 眠気は比較的でにくい
- 腰曲がりの改善効果があるかもしれない
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