目次
はじめに
アマンタジンはパーキンソン病治療薬の中でも少し特殊な薬です。その特徴と注意点について解説します。
作用機序
アマンタジンの作用機序は複雑でいまだに解明されていない点もあります。元々はインフルエンザの治療薬として開発されたものが、たまたまパーキンソン病患者に投与したときに、その症状が改善したところから、パーキンソン病治療薬として認識されるようになったようです。
ドパミン刺激を増やす作用(ドパミン放出促進、ドパミン再取込阻害)とグルタミン酸受容体拮抗作用、抗コリン作用などが言われています。ドパミン刺激を増やすことでパーキンソン病の症状緩和につながります。しかし、ドパミン刺激作用だけなら他のレボドパやドパミンアゴニストなどの方が直接的で、効果も強くなります。
アマンタジン特有のものとしては、後者のグルタミン酸受容体拮抗作用と抗コリン作用が重要となってきます。以下に説明します。
良い点
抗ジスキネジア作用
アマンタジンを使用する最も多い理由がジスキネジア(不随意運動)の抑制作用だと思います。他のパーキンソン病治療薬はドパミン刺激を増やすことで、ジスキネジアは悪くなる傾向になります。その中で、アマンタジンはほぼ唯一といっていい、ジスキネジア抑制作用が示されています。その作用機序は難しくわかっていない点も多いですが、グルタミン酸受容体拮抗作用がとくに重要とされています。
ジスキネジア(*ピークドーズジスキネジア)が問題となった場合は、通常はドパミン刺激を減らすために、薬を減らさざるをえなくなります。そうするとジスキネジアはよくなっても運動機能が悪くなってしまうというジレンマに陥ります。その中でアマンタジンは運動機能は悪くせずにジスキネジアを改善させる可能性があります。
すくみ足改善作用
パーキンソン病の困る症状の一つとして、すくみ足があります。他の治療薬でよくなるすくみ足もありますが、他の症状がよくなってもすくみ足だけが残る場合もあります。そのようなすべてのすくみ足に効くわけではなりませんが、一部の患者さんでは、このすくみ足にアマンタジンが効くことがあります。他の治療で難渋している場合は、試してみる価値はあるかもしれません。
悪い点
アマンタジンの主な注意点は認知機能低下とアマンタジン脳症です。
認知機能低下
アマンタジンには抗コリン作用があります。抗コリン薬のところでも解説していますが、抗コリン作用は、パーキンソン症状は改善しますが、認知機能は低下させる傾向があります(あくまで薬の作用による一時的なもので、脳が縮んだり、認知症が進んだりするわけではありません)。認知機能が低下すると、幻覚や妄想などの症状が出やすくなります。そのため、これらの症状がでた場合は他の薬の調整とともに、アマンタジンの減量が必要となる場合があります。
アマンタジン脳症
アマンタジンで最も注意すべきは、このアマンタジン脳症です。すべての患者さんで起こるわけではなく、腎臓の機能が悪い人や高齢者では起こりやすくなります。
アマンタジンは腎臓から尿として排出されるのですが、腎臓の機能が悪いとアマンタジンが体の中にたまってしまいます。そうすると、さらに腎臓の機能も悪くなってさらにアマンタジンがたまってくるという悪循環になります。そうすると、幻覚や妄想などが出現し、体がピクッと動くミオクローヌスという現象も起こります。さらに悪くなると意識が悪くなってきます。
治療としてはまずアマンタジンを中止することです。多くの場合は数日から数週間で改善します。重症の場合は一時的に血液透析が必要となることもあります。
そのため、高齢で腎機能が悪い人は、あまり高用量のアマンタジンはおすすめできません。
まとめ
アマンタジンは、
- 抗ジスキネジア作用がある。
- すくみ足を改善させることがある。
- 認知機能低下に注意が必要。
- アマンタジン脳症の危険があるので、腎機能低下患者は要注意。
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