抗コリン薬

目次

はじめに

抗コリン薬がパーキンソン病の治療において、他の治療薬と異なる点はドパミン刺激とは直接関係しない点です。後述する副作用もあり、パーキンソン病の治療に長けた医師でないと使いにくいお薬です。

*他のパーキンソン病治療薬の解説はこちら

ドパミンとアセチルコリン

通常、運動のスムーズさをつかさどっている脳の部分(大脳基底核)は、神経伝達物質であるドパミンとアセチルコリンが絶妙なバランスをとって調整されています。

パーキンソン病では、ドパミンが減ることで、アセチルコリン優位となり、動作緩慢や振戦などの症状がでます。

抗コリン薬は、このアセチルコリンの働きを抑えることで、ドーパミンとアセチルコリンのバランスを改善し、症状の軽減を図ります。

抗コリン薬の使い所

後述しますが、抗コリン薬は高齢者には使いづらいので、主には若年者向けです。とくにふるえ(振戦)や、体の一部がこわばってねじれるような症状(ジストニア)がある場合に使われることがあります。

副作用

抗コリン薬は副作用が比較的多いため、慎重に使用されます。特に高齢者には以下のような副作用が問題となります。

認知機能の低下

アセチルコリンは認知症の代表であるアルツハイマー病のときに減少する神経伝達物質です。つまり、アセチルコリンを抑えると、認知機能が悪くなる傾向となります。若年者ではさほど問題とならないのですが、高齢者ではそもそもアセチルコリンが減っているところに、さらに抑えることで認知機能が低下します。ただし中止すると元には戻ります。

パーキンソン病患者さんでは、病気そのものの症状やドパミン補充療法による副作用として、幻覚や妄想がでることがあります。認知機能が落ちると、それがさらに増悪することがあるので、抗コリン薬がきっかけとなって、それらの精神症状が悪化することがあります。これらの問題症状が出現した場合は減量・中止を考慮します。

自律神経症状

アセチルコリンは脳では認知機能に関わり、体の方では自律神経に関わる神経伝達物質です。とくに副交感神経に関わるので、それを抑えることで、副交感神経の不具合が起こります。排尿困難や口の渇き、便秘などが起こります。気づきにくい副作用なので、注意が必要です。ただし、それらがあっても抗コリン薬が必要な場合は、それらの対策をしながら続けざるを得ない場合もあります。

現在の位置づけ

抗コリン薬は、かつてはパーキンソン病治療の主要な選択肢でしたが、現在ではドーパミン補充療法やドーパミンアゴニストなど、より効果的で副作用の少ない治療法が利用されるようになっています。そのため、抗コリン薬は振戦が主症状の若年者や、他の治療法がうまくいかない場合に使用されることが多くなっています。

まとめ

  • 抗コリン薬は認知機能低下、精神症状増悪のリスクがある。
  • 主に若年者向け。
  • 振戦やジストニアなどの治療に有効なときがある。
  • 自律神経症状(口渇、排尿障害など)に注意が必要。

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