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ドパミンアゴニストとは
ドパミンアゴニストは、レボドパ製剤とともによく使われる薬剤です。「アゴニスト」というのは刺激薬のことで、ドパミンアゴニストはドパミンと似たような働きをするために人工的に作られた薬剤です。
レボドパ製剤との違い
では、レボドパ製剤とドパミンアゴニストはどう違うのか。もし効果が一緒だったり、どちらかが全ての面で良い場合は、一つで良いことになります。つまり、どちらも残っているということは、いずれも良い点、悪い点があるということです。その良い点と悪い点について解説します。
良い点
1.効果時間が長いものが多い。
最近のドパミンアゴニストは長時間作用型のため1日1回飲めばよいものが多いです。パーキンソン病患者さんは飲む薬が増えがちなので、少しでも飲む錠数が少ないのはありがたいことです。また皮膚に貼って、皮膚から吸収される貼付薬もあります。とくに薬を飲めないときなどには貼付薬は重宝されます。
2.運動合併症のリスクが少ない。
レボドパのところでも説明しましたが、進行期になるとレボドパの血中濃度が下がると動きが悪くなり(オフ)、血中濃度が上がると動けるようになる(オン)というオン・オフ現象が起こります。ドパミンアゴニストは長時間作用型で血中濃度の変動が少ないので、オフの底上げができます。
悪い点
レボドパが生理的な刺激をするのに比べて、ドパミンアゴニストは非生理的な刺激を与えるために、思わぬ副作用がでます。そのため使える用量もレボドパに比べて制限があります。副作用の中で最近注目されているのは、精神症状(幻覚・妄想や衝動制御障害)、眠気・突発性睡眠などです。
1.レボドパよりは効果が弱い
レボドパに比べると上限の用量が少ないため、少し効果は弱いです。
効果の強さ:レボドパ>ドパミンアゴニスト>その他のパーキンソン病治療薬
*添付文書上の上限は、レボドパ製剤1500mg、ドパミンアゴニストは種類によりレボドパ換算量で400-800mg程度。(ただしレボドパ製剤を1500mgまで使うのは稀で初期は300mg程度)
また1日かけてじっくり効く薬剤のため、飲んですぐ効くレボドパより効果の自覚も得られにくいという特徴もあります。
2.精神症状が出やすい
ドパミンは脳の中で減ると動きが悪くなったり、気分が落ち込んで喜べなくなったりします。逆に増えすぎると幻覚や妄想といった精神症状が出ます。つまりパーキンソン病を治療するためにはドパミン刺激を増やし、逆に幻覚・妄想がでる統合失調症はドパミン刺激を減らす治療をします。パーキンソン病治療薬はどれも幻覚・妄想が出現する可能性があります。その中でもドパミンアゴニストは比較的幻覚・妄想がでやすいと言われています。そのような場合は薬の量を減らしたり中止したり、幻覚を抑える薬を飲んだりして対応します。
衝動制御障害も重要な精神症状の一つです。衝動制御障害は、ギャンブルや性的な衝動、食事や買い物をがまんできなくなってしまう精神症状です。関連症状として、趣味に過剰に没頭してしまったり、punding(パンディング)といって意味のない行動をしつづけてしまったり、ドパミン調節異常症候群といってパーキンソン病治療薬を過剰に欲しがってしまうような症状がでたりもします。
2.眠気・突発性睡眠
レボドパもドパミンアゴニストも眠気やぼーっとするような症状が出ることがあります。さらに先ほどの衝動制御障害によって夜も寝ずに作業をし続けてしまい、昼間に突然眠り込んでしまうということも起こることがあります。
レボドパが先か、アゴニストが先か
パーキンソン病と診断されたとき、最近ではまずレボドパを使うことが多くなっており、パーキンソン病診療ガイドラインでも、特別な理由がなければレボドパから開始することになっています。

しかしこれには歴史的な変遷がありました。昔はレボドパが劇的な効果があることがわかりどんどん使われていました。それが数年経つと、ジスキネジアが出現することがわかり、一時期、レボドパによる毒性であるのではという議論になりました。しかし最近ではそれは否定されていて、むしろドパミンアゴニストによる副作用(眠気や衝動制御障害など)の懸念もあり、どちらかというとレボドパを先に使う傾向になっています。
レボドパを先に使う方が動きの症状が良い傾向であることも臨床研究で確認されつつあります。一方でやはりジスキネジアはレボドパを先に使う方が早めにでるということも言われてはいます。それでもあまり生活に支障を生じない程度のジスキネジアを過剰に恐れるよりは、生活に直結する運動機能を適切に保つ方が全体としては大事だねという話になっています。
ドパミンアゴニストの使い所
ドパミンアゴニストは良い点、悪い点を十分に理解しながら使う場合、症状のコントロールをする上で非常に有用な選択肢となりえます。この使い道に関しては、けっこう専門家の間でも意見が分かれるところです。
レボドパでは改善しにくかった抑うつ症状や倦怠感に対して、少量のドパミンアゴニストがとても効いた例があります。
また進行期では、1日の中でレボドパを飲む頃に動きが悪くなってしまっていて、レボドパ自体を飲み込みにくくなる人もいます。その場合はドパミンアゴニストの貼付薬で底上げをしたりすることができます。
症状は人それぞれのため、症状にあった調節が必要となってきます。
まとめ
以上、ドパミンアゴニストについて、レボドパと比較しながら説明しました。ドパミンアゴニストの特徴は以下の通りです。
- 効果時間が長く、ドパミン刺激を持続的に行うことができる。
- レボドパに比べて、運動合併症が出にくい。ただし効果の強さはレボドパよりは弱い。
- 幻覚・妄想、衝動制御障害、眠気などの副作用に注意する必要がある。
- レボドパよりはジスキネジアが出にくい傾向にある。
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