はじめに
パーキンソン病は脳のドパミン神経が減ることで、動きが鈍くなり、ちょこちょこと小股の歩き方になることが特徴です。手足のふるえ(振戦)が起きることもあります。一方で、そのような症状がでたときに、すべてがパーキンソン病かというとそうではありません。このように、動きが鈍く、歩きにくくなったり、ふるえたりする症状がでる病気を総称して「パーキンソン症候群」といいます。今回はこのパーキンソン症候群について説明します。
*パーキンソン病の説明はこちら:(パーキンソン病とは)
*症候群の説明はこちら:(「症候群」って何?)
目次
パーキンソン病とパーキンソン症候群の違い
パーキンソン病とパーキンソン症候群をわける一番の理由は、治療法が違うということです。パーキンソン病は減ったドパミンを増やしてあげることで症状がよくなりますが、パーキンソン症候群ではドパミンを増やすだけでは、あまり症状がよくなりません。
パーキンソン症候群で治療薬が効きにくい理由
少し不正確な言い方にはなりますが、パーキンソン病では脳の中でドパミン神経だけが減るという理解で大きな間違いはないでしょう。ではドパミン神経が減るとどうなるか。ドパミン神経が出すドパミンが減ります。ドパミンは、運動の回路をスムーズに動かす油のような存在です。
ドパミンが適切にでていると、その後の歯車がスムーズに動くのですが、これが少なくなると、歯車がうまく回りません。
パーキンソン病ではその分のドパミンを内服薬などで補うことで、また歯車が回りだします(レボドパ製剤)。
一方で、パーキンソン症候群は、いろんな原因がありますが、多くはドパミンが減るだけではなく、歯車の方の不具合も起こっていることが多いのです。そのため、ドパミンを補充するだけでは、歯車は結局うまく回りません。
パーキンソン症候群の種類
パーキンソン症候群にはどのような病気があるのでしょうか。すべて覚える必要はありませんが、主なパーキンソン症候群には以下のものが挙げられます。
- 多系統萎縮症
- 進行性核上性麻痺
- 大脳皮質基底核変性症
- 脳血管性パーキンソン症候群
以下、ごく簡単にそれぞれの病気について説明します。難しい内容もあるので、こんな感じの病気があるんだなということだけ読んでいただけば良いと思います。
多系統萎縮症(MSA)
多系統萎縮症は、「多」くの「系統」の神経が「萎縮」することが特徴の病気です。多くの系統というのは具体的には、動きを司る三系統(参照:脳はどうやって体を動かしている?)の「錐体外路」「錐体路」「小脳」に加え、血圧や消化機能、排尿機能などを司る「自律神経」の障害が起こる病気です。パーキンソン病は基本的には錐体外路の障害がメインで、自律神経障害も起こりますが多系統萎縮症の方がより重度です。
少し専門的な話になりますが、パーキンソン病と多系統萎縮症は、原因となる蓄積する異常蛋白質は同じ「αシヌクレイン」です。しかしパーキンソン病では、αシヌクレインはドパミン神経にたまる一方、多系統萎縮症ではドパミン神経ではなく、その周りのグリア細胞といわれる細胞にたまります。そのため、ドパミン神経以外の様々な脳の場所に障害が起こって、上記のような多くの系統にまたがった症状がでてしまいますし、余計に治療が難しくなってきます。
進行性核上性麻痺(PSP)と大脳皮質基底核変性症(CBD)
進行性核上性麻痺と大脳皮質基底核変性症は、どちらもタウ蛋白というものが沈着する病気です。進行性核上性麻痺は転倒しやすかったり、眼の動きが悪くなることが特徴です。大脳皮質基底核変性症は、症状がさまざまであることが特徴なのですが、症状の左右差が強いことが典型的です。ただし、進行性核上性麻痺と症状が非常に似るときもあります。
脳血管性パーキンソン症候群
脳血管性パーキンソン症候群は、小さな脳梗塞が、運動に関連した脳の場所に積み重なることで、パーキンソン病のようなチョコチョコ歩きになってしまう病気です。どこにどれくらいの脳梗塞があるかによって症状は様々ですが、パーキンソン病に典型的なふるえ(振戦)や左右差のある関節の硬さ(筋強剛)などは起こりにくいのが一般的です。
まとめ
以上、パーキンソン病とパーキンソン症候群の違いについて説明しました。
- パーキンソン病は治療薬が効くが、パーキンソン症候群は効きにくい。
- パーキンソン症候群はドパミン神経以外の場所にも病変があることが多い。
- 多系統萎縮症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症がとくに鑑別として重要。
- 脳血管性パーキンソン症候群は頻度としては多く、チョコチョコ歩きが特徴。
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