千葉幕張で開催されました日本神経学会各術大会に参加してきました.久しぶりに都会の空気を吸い,交友も深めることができました.
今回学んだことを健忘禄的に記載します.専門的な話で詳細な説明は割愛しているので,一般の方にはわかりにくい話と思います.
筋萎縮側索硬化症に対するロピニロールの講演を拝聴しました.基礎・臨床にまたがるトランスレーショナルリサーチおよびバックトランスレーショナルリサーチに関するお話で,臨床データと基礎データが綺麗な相関を示したことが驚きでした.またロピニロールが効きやすいタイプとそうでないタイプがあり,コレステロール代謝に関与する経路が重要な役割を果たしているということでした.さらなる研究の発展が期待されます.
また,なぜドパミン刺激薬であるロピニロールが効くのかという検討の中で,なんと脊髄前角細胞にドパミンD2受容体がかなり発現しているということを発見されたようです.これまであまり注目されてこなかったために見過ごされていたのでしょう.そんなベーシックなことが今更わかったということに衝撃を受けました.もしかするとパーキンソン病の薬剤性の姿勢障害やドパミン刺激過剰によるすくみ足などに関連したりしているのかもしれないと思ったり,新たな研究のシーズが隠れているかもしれません.
あと,普段あまり勉強しない脳卒中のことも勉強できました.DAPTの適切な継続期間に関してはまだcontroversialであること,心房細動患者が出血をきたした後も早めにDOACを再開すべきということ,左心耳閉鎖術の適応に関することなど,さまざまなことを学ぶことができました.
シナプス研究におけるcbln1の役割,またcbln1の人工的キメラを用いた小脳失調の治療,また中脳ventral tegmental areaから側坐核への経路にcbln1が関与していることなど,普段かかわることの少ない基礎研究の一つの潮流について非常に勉強になりました.
パーキンソン病の中脳萎縮という非常に興味深い新しい話題もありました.中脳萎縮のパーキンソン病患者では側坐核が萎縮傾向だったということで,もしかすると腹側被蓋野からのmesolimbic pathwayの障害と関連し,それが衝動制御障害などの精神症状に関連しているかもしれないとのことでした.
中脳のgliomaによる典型的パーキンソン病様症状や肺がんによる腫瘍随伴パーキンソニズム(進行性核上性麻痺様症状)の動画もimpressiveでした.
その他,多系統萎縮症では中小脳脚の左右差があるといること,パーキンソン病では頸部迷走神経が細くなるということ,抗NCAM1抗体脳炎,次世代タウPET,進行性核上性麻痺のsympathetic skin reflexの異常(前頭葉機能を反映?)など,勉強してきました.
以上,神経学会学術大会の参加報告でした.みなさんの今後の臨床・研究のヒントになれば幸いです.
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