脳はどうやって体を動かしている?(大脳基底核と小脳のお話)

目次

はじめに

私たちの体がスムーズに動くためには、脳の中でとても精緻な調整が行われています。運動が思い通りに行われるためには、大脳皮質、大脳基底核、小脳が連携して働いているのです。これらの役割を「運転」に例えて説明してみましょう。

1. 大脳皮質:アクセル役

まず、運動を始めるための「指令」を出すのが大脳皮質です。もっと具体的にいうと、大脳皮質の一部である、「一次運動野」と呼ばれる部分です。

例えば、歩く、手を挙げる、話すといった動作は、すべてこの大脳皮質がスタートの合図を出します。アクセルを踏んで車を前に進めるように、体の各部位を動かすための第一歩を踏み出すのです。大脳皮質が運動を開始し、意図的な行動を引き起こす主な役割を担っています。

2. 大脳基底核:ブレーキ役

しかし、運動にはバランスが重要です。すべての動きを無制限に進めてしまうと、制御が効かなくなってしまいます。そこで、運動の調整を行うのが大脳基底核です。大脳基底核は、不要な動きを「抑制」する役割を果たしています。これを「ブレーキ」として考えると分かりやすいでしょう。

たとえば、手を挙げたい時に余計な力が入ってしまうと、意図せず他の筋肉も動いてしまうかもしれません。このような不必要な動きを抑え、スムーズに目的の動作だけを行えるように調整するのが大脳基底核です。パーキンソン病のような場合、このブレーキが強くかかりすぎて、体が思うように動かないことがあります。

3. 小脳:ハンドル役

次に運動の「方向性」や「調整」を担うのが小脳です。運動の正確さ、バランス、協調動作を細かくコントロールしてくれます。小脳を「ハンドル」として考えてみると、運動の進む方向や精度を調整する役割を担っていることが分かるでしょう。

例えば、歩いている時にちょっとバランスを崩したとしても、小脳がすばやく調整してくれるおかげで、倒れずに済みます。小脳は、運動を滑らかに行うための精密なコントロールセンターといえるでしょう。

もう少しだけ具体的な話

苦手な人は読み飛ばしてください。今まで説明した脳の回路は以下のようになっています。大脳基底核と小脳のコントロールは視床という中継地点で情報が整理されます。それを大脳皮質に伝えて、実際の運動が始まります。

また、それぞれ大脳基底核や視床の中でもさらに細かく機能がわかれています。今回その説明は省略し、また別の項でお話しします。

不具合の例

これらのシステムが一部でもうまく機能しなくなると、運動に支障をきたします。例えば、パーキンソン病では、大脳基底核のブレーキが強くかかりすぎて、動きがぎこちなくなることが知られています。小脳の問題では、運動の調整やバランスが崩れ、意図した通りに体を動かすのが難しくなります。

運動の調整機能のまとめ

こうして考えると、大脳皮質が運動を開始する「アクセル」役を担い、大脳基底核が動きを調整する「ブレーキ」役、小脳が運動の精度や方向性を管理する「ハンドル」役として、それぞれが重要な役割を果たしていることが分かります。これらのシステムがしっかり連携することで、私たちは日常の動作を滑らかに行うことができるのです。

最後に

どうだったでしょうか。私たちが普段意識せずに動かしている体も、脳の中ではいろんな部位が共に働きながら調整していることが少しイメージできたでしょうか。脳の機能はまだまだわかっていないことも多いですが、それでもわかってきていることも多く、この動きの調節機構に関してはかなりわかってきています。ご興味がありましたら、また別の脳の機能についても学んでいきましょう。

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