健康診断①(血液検査) 健康のラストチャンス?!

日本では毎年、公的な健康診断があります。ここまで至れり尽くせりな制度は医療経済的にはどうかという議論もありますが、受けられる立場としては、積極的に利用してやりましょう。ここでもし異常が見つかったときには、安く健康でいられるラストチャンスかもしれません。つまり、すぐに受診すれば改善する可能性があるということです。

ここでは健康診断で測る血液検査について説明します(血圧やBMIなどの検査は別項で)。とくにすぐに治療に結びつくのは脂質と血糖の項目です。それ以外も高度の異常があった場合はすぐに受診が必要な場合もあります。ひとつずつ解説していきましょう。

目次

脂質関連検査

中性脂肪(トリグリセリド:TG)とコレステロールが含まれます。コレステロールの中には、いわゆる悪玉のLDLコレステロールと善玉のHDLコレステロールがあります。中性脂肪やLDLコレステロールが高いというのは、血管の中の血液に油がベトベトしている状態です。ずっと血液が油ベトベトな状態だと、血管に油がこびりついていきます。それが長年続くと血管の中が目づまりをおこしていきます。血管は全身につながっていますが、とくに大事な血管は心臓や脳につながる血管です。これがつまってしまうと心筋梗塞や脳梗塞をおこします。そのため、血液が油ベトベトな状態をほうっておくと、ふだんは何も感じないのですが、ある日突然命にかかわるような重病としてあらわれます。そのため、この数値が高いときには、一刻も早くではないですが、数ヶ月以内には正常の値に下げられるように、食生活や運動を心がけ、それでも下がらない場合はお薬を飲む必要があります。

ちなみにコレステロールは直前の食事内容にはあまり影響されませんが、中性脂肪は前日の油ものなどでもかなり数値が変わってしまうので、きちんとした状態を調べるためには、健康診断の前日にむちゃ食いはしないようにしましょう。逆にコレステロールが高かった場合は、前日に何を食べたかとかいう問題ではないので、きちんとその事実を受け入れて対応を考えましょう。

血糖関連検査

ここでは血糖値とHbA1cがよく測られます。血糖値は、文字通り血液中のブドウ糖の濃度のことです。ブドウ糖は食事をすると上がり、時間がたつと下がってきます。そのため健康診断ではふつう空腹時に測ります。空腹時に高いとそれだけで問題なのですが、数値がころころ変わる検査なので、判断にまようことがあります。そのため、もう少し安定した数値を測る必要があり、それがHbA1cです。ここではくわしい説明はしませんが、これは1ヶ月間の血糖値の平均値をあらわすといわれています。

血糖値はちょうどいい場合は、体や脳のエネルギーとなっていいんですが、無駄に高いのが続くとそれが体には毒になります。とくに血管にダメージがたまって、腎臓や眼の血管に異常がでたり、ひどければ手足の血流が悪くなって腐ってくることもあります。

症状がでて気づいたときには手遅れです。だから、せっかく健康診断で血糖値が高いことを知らせてくれた場合は、体がボロボロになる前に対応する必要があります。すぐに病院を受診して治療を受けましょう。

肝機能

肝機能検査としてよく測るのはAST、ALT、γ-GT(もしくはγ-GTP)などです。これらは、肝臓に何らかの負担がかかっているときに上がってくるものです。

これが上がる原因で頻度が多いのは、お酒(アルコール性肝障害)です。お酒を飲みすぎると肝臓だけでなく、いろんなところに病気がでるので、ほどほどにしましょう。その他では、薬で肝臓に負担がかかっている状態(薬剤性肝障害)やウイルス性肝炎があげられます。

ウイルス性肝炎で有名なものとしてB型肝炎やC型肝炎があります。ふつうにしているとこれらに感染することはないのですが、もし感染していることがわかった場合にはすぐに病院で治療を受ける必要があります。現在はこのB型肝炎やC型肝炎の治療はすすんでいて、完治を目指すことができます。逆にほうっておくと、肝臓癌や肝硬変などの重大な病気になりますので、受診するメリットはかなりあります。

飲酒をしていて少し高いぐらいでは、大きく問題ではないのですが、逆にお酒や薬を飲んでいないのにもかかわらず、この肝酵素の数値が高い場合には、何か病気が隠れている可能性があるので、かならず病院で相談しましょう。

ひとつ見のがしがちなのは、筋肉や心臓の病気です。この肝酵素は肝臓の障害のときに上がりますが、それ以外の筋肉などの障害でも高くなることがあります。筋肉や心臓の病気のときに、CKという値が上がりますが、それが上がったときに肝酵素も一緒に上がってしまうのです。そのため、肝酵素が上昇している場合は、一緒にCKもはかってもらうことをおすすめします。

腎機能

クレアチニン(Cr)、eGFR、尿素窒素、尿酸などが含まれます。

腎臓の機能を測るのに最も正確なものがGFRというものですが、GFRを測るのはとても難しいので、クレアチニンや体型などから計算される推定GFR(eGFR)が、腎機能の指標になります。これが低いほど腎臓の機能が悪いことになります。腎機能が悪くなると尿素窒素も上がります。

尿酸は腎機能を測るというよりは、数値が高いと痛風になってしまうものです。ビールなど食生活などが影響するので、高い場合は気をつけましょう。最近は尿酸値を下げる良いお薬もあるので、必要に応じて使いましょう。

貧血検査

貧血の項目としては、赤血球数、血色素量(ヘモグロビン:Hb)、ヘマトクリットが含まれます。

まず重要なのはヘモグロビンです。ヘモグロビンは赤血球の中に含まれていて、体の中に酸素を運ぶ役割を果たします。そのためこれが減ると、少し動いただけでもすぐに息切れしたり疲れたりします。このようにヘモグロビンが減った状態を貧血と言います。

ちなみに、よく「貧血で倒れる」といいますが、これは多くは血圧が下がってしまって立っていられなくなることを表現していることが多く、本当の貧血ではありません。

赤血球数は文字通り、血液中の赤血球の数であり、ヘマトクリットは赤血球の体積を表します。重要なのは、そこから赤血球の大きさなどを計算できることです。

赤血球の大きさから、ある程度病気の原因を予想することができます。

貧血でいちばん多い原因は、ヘモグロビンの材料である鉄の不足によって起こる、鉄欠乏性貧血です。材料が減る貧血なので、赤血球は小さくなります(小球性貧血)。

急に出血が起こったときにも、もちろん貧血となりますが、このときは赤血球の大きさ自体は変わりません(正球性貧血)。

次に、少し難しい話になりますが、赤血球が大きくなることもあります(大球性貧血)。赤血球は体の中で作られている途中の段階では大きめで、赤血球になると小さくなります。そのため、ビタミン欠乏などでうまく赤血球がつくれなくなると、貧血であるにもかかわらず、赤血球(の平均)は大きくなります。

まとめ

以上、健康診断で測る血液検査の説明と、それに関連した主な病気について説明しました。健康診断で異常を指摘されたときには、まだ自覚的には体調が悪いということを感じていないかもしれません。でも、逆にかなり早めに発見してくれたことをラッキーと思って、早めに病院を受診しましょう。これが、長い間、安価で健康に過ごせるラストチャンスかもしれません。

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