レボドパ製剤

パーキンソン病の症状が出る主な原因は脳内ドパミンの減少です.レボドパ(Levodopa / L-DOPA)製剤は内服すると脳内に取り込まれ,ドパミンに変換されることで,脳内ドパミンを補充する最も直接的で重要な薬剤です.パーキンソン病の薬剤治療の主体はこのレボドパ製剤になります.

レボドパは良い薬なのですが,腸から吸収されて脳に届くまでに代謝されてしまい,十分な量を脳にとどけることが難しいのが難点の一つです.そのため,その代謝を阻害する薬剤が合剤となって入っています.その合剤の種類によって二つの製剤があります.

  • レボドパ/カルビドパ製剤(メネシット,ネオドパストン,ドパコールなど)
  • レボドパ/ベンセラジド製剤(マドパー)

この二つの種類にほとんど変わりはありませんが,マドパーの方がより吸収がよく急峻に血中濃度が上がります.

レボドパ製剤の弱点として,体内から1-2時間で排出されてしまうという点です.初期にはそれでも効果は一日中続きますが,病気が進行してくると効果が切れてくるウェアリング・オフ現象(すり切れ現象)というものが出現してきます.

つまり,内服後一旦運動症状はよくなるものの,2-3時間たつとまた動けなくなり,また内服が必要になってくるという現象です.さらに,薬剤の効果がある時間帯に,今度は逆に薬が効きすぎてしまい,体が勝手にくねくねと動くジスキネジアという現象も起こります.これら,ウェアリング・オフ現象と薬剤誘発性ジスキネジアを併せて「運動合併症」といいます.進行期のパーキンソン病ではこの運動合併症をいかに改善するかが薬剤調整の一つの目標となり,様々な補助薬やデバイス治療などが必要になってきます.これらに関してはまた別個に説明します.

副作用について

副作用として多いのは,ドパミン自体の消化管への作用そのものである,消化管運動障害による嘔気が挙げられます.そのため吐き気止めを一緒に内服することが多いです.

よく聞かれることの一つとして,「この薬はきついものですか?」という質問があります.「きつい」という表現は漠然としたものだと思うのですが,一般的には「副作用が多いか」という質問に置き換えて説明すると,副作用は他のパーキンソン病治療薬に比べて少ないといえます.

最も注意すべき副作用のひとつとして,幻覚・妄想があります.ただしこれは初期の状態では起こることはまずなく,病気の進行によって起こるものです.この幻覚・妄想状態は脳内のドパミンが不適切に増えた場合に起こる現象であるため,ある意味,必然的な副作用です.ただし,他のパーキンソン病治療薬も主にはドパミン刺激を増やすお薬であるため,いずれの薬剤でも幻覚・妄想のリスクはあります.パーキンソン病治療薬の中でレボドパは比較的幻覚・妄想は起こしにくいお薬です.

つまりさきほどの「きつい」お薬かというと,副作用としては「きつくない」が,効果としては高い(「きつい」)お薬だということです.薬効が短いという弱点がありつつも,今でも主流の治療薬であるゆえんです.

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