脳の基本的な構造

-脳の全体像と運動野、感覚野、視覚野を主に-

目次

はじめに

脳は不思議な臓器です。自分の考えが脳から出ているという考えは現代では定着しつつありますが、まだその根本的なところはわかっていないのが本当です。

例1:ゲージさんの例

しかし、脳の「この場所」に「このような機能」があるらしいという、個別のことは一つずつわかってきました。一つの有名な例は、フィニアス・P・ゲージ(参照:wikipedia)さんの事故です。ゲージさんは元々真面目な性格でありましたが、脳の前の方に鉄の棒が突き刺さるという痛ましい事故にあいました。一命をとりとめるものの、性格が全く変わってしまい、同僚に「もはやゲージではない」といわれたとのことです。これにより脳の前の方は社会的な行動に関わる部位ということがわかってきました。

例2:ブローカの例

もう一つの有名な例は、ブローカ(参照:wikipedia)の研究です。ピエール・ボール・ブローカは1800年代の有名な医師・解剖学者です。ルボルニュという患者を診察すると、言葉の理解は良いにも関わらず、「タン」としか話せない症状がありました。彼が亡くなった後、解剖で脳の左前方に障害があることがわかり、ここが言語を話す上で重要な部分だということがわかってきました。のちにこの部分をブローカ野(参照:wikipedia)と呼ぶようになっています。

脳の病気が、脳の機能を教えてくれる

このように脳は、生きていくために必要な機能をおどろくほど精密に分担しています。そのため、脳が部分的に障害されると、日常生活では想定もできないような不思議な症状が現れたりします。ある有名な先生が、一人一人の患者は神様の人体実験の結果と捉えて、その研究結果を我々医師が解釈し伝えなければならないとおっしゃいました。これまでの医学の歴史の中で、様々な患者さんの様々な症状の知見が積み重なって、現在の脳の理解につながっています。最近ではさらに画像検査などの技術の進歩によって、患者でない健常者の脳の研究も少しずつ進んできています。

この「脳の基本的な構造」では、脳の解剖学(脳のどの部位をどのように呼び、どのような機能があるのか)の基本について説明していきます。脳の全体像と一次運動野、一次感覚野、一次視覚野について主に解説します。医学部で脳を学ぶ講座のはじめに習うような内容です(医学部学生も一度で覚えられるような内容ではなく、繰り返し説明してやっとわかってくれるような内容です。ずっとわかってくれない学生もいますが、、、いろいろ詰め込みすぎなんでしょうね。)

脳の全体像

脳は大きく、大脳、小脳、脳幹に分けられます。脳幹から下は脊髄につながります。大脳をさらに分けると、前頭葉(ぜんとうよう),頭頂葉(とうちょうよう),側頭葉(そくとうよう),後頭葉(こうとうよう)の4つの表面の領域と大脳基底核(きていかく),視床(ししょう)などの深部の領域があります.その下に脳幹があり,後ろに小脳がついています。

脳の機能の中でとくに大事な機能は、考えること、動かすこと、感じること、生命を維持することです。

  • 考えることはもう少し詳しく書くと、記憶や判断、情動などの複雑な機能に分けられます。
  • 動かすこと(運動)には、手足を動かすだけでなく、目の動きや瞬き、話すこと、呼吸など体中の様々な動きがあります。
  • 感じること(感覚)には、五感と呼ばれる、触った感覚(触覚)、見ること(視覚)、聞くこと(聴覚)、臭う(嗅覚)こと、味わうこと(味覚)が含まれます。
  • そして、見て、聞いて、判断して、話して、動くという一連の作業を脳のあちこちで共同して働かせる必要があります。

まず大まかには、運動に関することは脳の前の方、感覚に関することは後ろの方にあり、その間でこれらの情報を統合する部分があるという感じです。また、脳は左右に分かれていますが、右の脳は左の体を、左の脳は右の体を司るという形でクロスしています。また左脳が言語や計算など、右脳が感性や空間認知などにかかわるという話も有名です。

脳の機能を全て話していくとなると膨大な量になり、また先程言ったようにわかっていない部分も多いです。そのため今回はよくわかっている部分の中でも、一次運動野、一次感覚野、一次視覚野について解説します。

一次運動野と一次感覚野

上の図の前頭葉と頭頂葉の間に溝がありますが、これを中心溝と言います。中心溝を挟んで前側が一次運動野、後側が一次感覚野となります。先程言った、運動が前、感覚が後ろと言ったことと関連します。

この一次運動野では、どこがどの体の部分を動かすか、一次感覚野ではどこがどの体の部分の感覚を感じるかということが決まっています。下の図は有名な神経解剖学者のペンフィールドさんが提唱したホムンクルス(小人)と言われる図です。一次運動野・感覚野に沿って、縦に切った図になります。脳のてっぺんに足があり、その後、手の領域、顔、口と続きます。手のは複雑な動きをする必要があるので、大きく割りあてられています。口の部分も話したり、食べたり、飲み込んだりと様々な役割があるので、範囲が広くなっています。たとえば、この手の領域だけ脳梗塞を起こしたりすると、その反対側の手(右の脳だと左手、左の脳だと右手)が動かなくなります。(*神経の経路については別の項で。)

一次視覚野

見たものを認識する中枢が一次視覚野であり、脳の一番後ろの後頭葉にあります。こちらも右の後頭葉が障害されると左の視野が見えなくなります(半盲)。よく左目が見えなくなったと訴える方もいらっしゃいますが、両目とも左側が見えなくなるのが特徴です。右目がよく見えていて左目が見えないという場合は、脳の病気ではなく目の病気ということになります。さらに右の上半分が障害されると、左下だけが見えなくなり、四分盲といいます。(*視覚の経路については別の項で)

先程、右後頭葉障害のときに左目が見えなくなったと訴える方がいらっしゃると言いましたが、半盲のときにはどちらかといえば、見えなくなっているということに気づいていないことが多いのです。そのため、「左側をよくぶつけるようになった」などの症状がでがちです。その症状から左目が見えないと解釈するのかもしれません。半盲となった感じがどんな感じなのかは想像しにくいと思いますが、左側が真っ黒になるわけではありません。

下の図のような盲点を感じるテストを受けられたことはありますでしょうか。

右目をかくして、左目で右の✖️をみると、左の丸が消えてしまうというテストです(消えない場合は近づいたり離れたししてみてください。スマホなら横画面の方が良いと思います)。ずっとこの盲点の状態だと、見えていないことさえ気づかないということにお気づきでしょうか。盲点はとても小さい範囲ですが、半盲の場合はこれがより広い範囲見えなくなります。なかなか想像しにくいですよね。

まとめ

以上、脳の全体像と一次運動野・感覚野・視覚野について解説しました。脳の特定の部分がそれぞれの役割を担っているということがわかってきましたでしょうか。そのため、このような脳の機能に詳しい脳神経内科医は、診察するだけでMRIなどを見なくても、大体脳のどこらへんが障害されているということが手に取るようにわかってしまうのです(私はこれがかっこいいと思って、脳神経内科医になったということもあります)。

みなさんもぜひ楽しく勉強を続けて、脳の神秘に触れていってみてください。

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